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東京高等裁判所 昭和51年(ツ)56号 判決 1976年7月08日

上告人 株式会社京浜フランヂ製作所こと 株式会社京浜フランジ製作所

右代表者代表取締役 二片栄司

右訴訟代理人弁護士 宮文弘

被上告人 崔甲祚

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人宮文弘の上告理由について

一、原審が、乙第三号証及び第四号証の一の記載にもかかわらず、現実に授受された敷金の金額を一〇〇万円と認定したことは、原判決が挙示する証拠及びその判断の過程に照らして正当として是認することができる(但し、原判決八枚目―記録一四九丁―表五行目の「乙第四号証の一」は「乙第四号証の二」の、同一〇行目の「乙第四号証の二」は「乙第四号証の一」の各誤記と認められる)。したがって、この点に関する論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断及び事実認定を非難するにすぎず、採用できない。

なお、原判決は乙第一一号証には言及していないが、同号証が上告人代表者の執行官に対する陳述に基づいて作成されたものであることから、右代表者尋問の結果と同じく措信しない趣旨であることが明らかである。

二、訴の一部が取下げられ又は請求が減縮された場合における訴訟費用については民訴法一〇四条の適用があるものと解するのが相当であり、その負担者及び負担の額は、同条の定めるところに従い終局判決とは別個の手続で決定されるべきであって、終局判決では直接に判断の対象となった請求についてのみ訴訟の勝敗、訴訟追行の状況等を斟酌して訴訟費用の負担者及び負担の割合を決めれば足りるものというべきである。されば、原判決が被上告人が原審において訴の一部を取下げ更に請求の減縮をしたうえその最終段階で支払を求めた七〇万円の請求を全部理由ありとして認容した以上、控訴費用を全部上告人の負担としたことは正当であって、所論の違法はなく、この点に関する論旨も採用できない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 兼子徹夫 太田豊)

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